『暗器使い』NG集

 
 困ったことに、おれはあまり設定を煮詰めずに物語を書きはじめてしまうため、後で読み返すとおかしなところがよく見つかります。そういうものを見つけるために読み返すわけだけど、これはなかなかに面倒くさい作業です。
 

 

 正確にいうと、煮詰めないのではなくて煮詰めたつもりのやつを書いてる途中で簡単に修正してしまうので、計画性のない増築を重ねた古民家のように、これおかしいだろ!って部分が読み返すと出てくるわけです。だからたぶん治らない。これを阻止するためにはお話の書き方自体を改めなければなりません。
 
 以上より、おれがこの先これを改めることはないだろうと思います。証明おわり。
 
 今回は、そういうのを見てみたいひともいるかもしれないと思うので、今投下している話のそういったところを記録・解説してみます。面白がってくれるひとがいたり、おれが書いてて思いのほか楽しかったりしたら、また同じような記事を作るかも。
 
 対象話は『('、`*川は暗器使いのようです』。たぶんネタバレは含みません。
  

 

NGその1
2レス目地の文
 
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 今では太陽が動いて陽の当たり方が変わったからといって、何の感情も生まれない。「ああそう」ってなものである。息を吸うときわざわざ酸素にありがたみを感じることがないように、いつの間にか砂漠の景色は私の当たり前になっていた。
 
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 これは投下直前に気になりました。
「あれ、この世界、酸素って発見されているのかい?」と。
 フィクションな世界を書いているので別にどうとでも言い訳はできるのですが、自分の中での整合性は保てなければなりません。この僕らの地球と違うところがあってもいいけれど、違うならどうしてそうなったのか、そうなった結果どうなるのか、といったところが考えられていなければならないというか。
 自分の無意識下でやってる部分を律さなければならないので、これはなかなか大変な作業です。しかしおれは必要なことだと思います。じゃないと自己満足ができないからね。
 
 さて、ウィキペディア様に訊いて調べたところ、どうやら酸素の発見は1771年のことであるようです。いつだよ。家康が死んだのが1616年の筈だから、日本でいうと明治時代あたりか?
 と、日本史に関する無知蒙昧さを実感したところで、確認すると、江戸時代であることがわかりました。徳川すげー。江戸時代めちゃ長!
 このお話の時代設計としては、それなりに昔の話のイメージでした。車や銃はあるけれど、今ほどの科学技術はない、といった感じ。大正時代くらいかな? 大正時代知らんけど。といった感じ。
 つまり、世界では江戸時代のあたりに発見されたらしい酸素ちゃんは、このお話の中でも結構昔に発見されていてもおかしいことではありません。
 ただし、それは、アカデミックなレベルの話。
 学校教育すらろくに整備されていない方がこの世界には似つかわしいので、とても一般社会に酸素という言葉が浸透していたとは思えません。このペニサスは、アイトウリュウという流派の次期当主ということで、一般人よりは高いレベルの教育を受けている可能性はありますが、化学に関して造詣が深いというのは不適切な気がします。
 ということで、この地の文内の『酸素』という単語を『空気』に差し替えました。こうして世界は守られた。
 
 
NGその2
1レス目地の文
 
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('、`*川「今日中に なんとかあそこに つきたいの」

 俳句か川柳でも詠むように、5・7・5のリズムで呟くついでに、また1歩足を進める。字余りなのは気にしない。

 とにかく、もう砂漠で野宿をするのはまっぴらごめんだったのだ。
 
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 いきなりレス順が前後して自分でも驚いている次第ですが、思い出した順なので書き直しません。
 NGその1と同様に、「お前の環境にそれあるの?」問題。今回の議題は俳句や川柳。気になったのは投下のずっと前の書き溜め段階。
 
 時代的には存在していてもまったく問題なさそうなものですが、ペニサスの出身地やその田舎ぶりを想像するに不適切な気がしました。俳句や川柳の歴史を調べて整合性を取るのがただ面倒くさかっただけ、という可能性は否定しません。
 まあでもそういう文化がなかったとしても、575に近い文言が語呂が良くて心地よい、というのは納得できる気がしますので、単にリズミカルな呟きということにしました。
 こうして世界は守られた。
 
 このへんを深く掘り下げていくと「その世界は日本語なのか? 便宜上日本語表記しているという体ではなくて?」という疑問が沸き上がってしまいます。
 この疑問に対する自分なりの回答は用意しているのですが、それを書くとあまりにこの記事が長くなってしまいますので、それはまた別の物語、いつかまた別のときに話すことにしよう、ということでどうかひとつ。さようなら。