('A`)の話のようです1-6.ダーツとフリースロー


('A`)の話のようです【まとめはこちら】
1-6.ダーツとフリースロー

 


1

 中間試験はいつもと同じ出来栄えだった。

 以前ブーンにも言った通り、僕は試験前に気合を入れた対策勉強ということをまったくしない。単純に面倒臭いというのと、勉強自体が好きなわけではないからである。

 ではどうやって成績を維持するかというと、試験勉強をしない分、日ごろの日常生活に勉強内容を組み込むのだ。具体的には、雑談の話題にお勉強のことを取り上げる。クーや貞子さんは薬学部に通う、どちらかというと高い受験偏差値を持つ大学生なので、僕が精一杯の知識で放り込んだ知識をいとも簡単に受け入れてくれるわけである。

 僕自身の脳みそ的な素質はおそらく大したことがないのだろうが、トップクラスの成績を望むわけでもないので、今のところ何とかやっていけている。こうした僕の勉強法を知ってか知らずか、彼女たちもそうした会話を進んで交わしてくれるのだ。

 今日もそうだった。僕らはそれぞれダーツ盤に向かってタングステン製の矢を投げていた。

('A`)「最近、カウントアップの平均得点がようやく下がり止んできたような気がする」

川 ゚ -゚)「ほう、おめでとう。・・どうして下がり止んだかわかるか?」

('A`)「僕が上達したからじゃあないの?」

川д川「そもそもどうしてダーツの腕が上達すると、一時的にせよ平均得点が下がるのか、ということをクーは訊いているんだと思うよ」


2

('A`)「どうして?」

川 ゚ -゚)「ドクオがダーツを始めて少し経って、まあまあブルに入れられるようになったあたりでわたしたちは言ったよな、そろそろそういう時期がくるぞ、と」

('A`)「言ったね」

川 ゚ -゚)「それは何故だ?」

('A`)「世のしきたりだからじゃあなくて? ほら、2年目のジンクスみたいな」

川 ゚ -゚)「違うな、これには数学的な根拠がある。数学的と言ったら大げさに聞こえるかもしれないが」

('A`)「数学的? う~ん、トリプルに入らなくなるからじゃあなくて?」

川 ゚ -゚)「それそれ、そうだよ。ダーツを始めると、上達して狙ったところに当てられるようになるに従って、当然得点は伸びていく。ただ、一定の上手さになると、偶然トリプルやダブルに入ることがなくなり、しかしブルにはそこまで入らないから、得点期待値は一時的に下がるんだ」


3

('A`)「なんだ、そういうことか」

 それなら僕にも実感があった。自信を持って頷ける。クーと目が合い、僕らは黙って頷き合った。

川 ゚ -゚)「それじゃあもう少し考えようか。トリプルライン以内には入るがブルを狙うことはできないドクオとブルを狙って投げられはするがトリプルラインまで外れることはないドクオ、いったいドクオは何パーセントの確率でブルに入れられるようになればカウントアップの平均得点が下がり止んでくれるのだろう?」

('A`)「う~ん? 確率で計算できるのか?」

川д川「できるよ。確率というか、期待値あたりの範囲だね」

川 ゚ -゚)「仮に今ドクオが下がり止んだ瞬間だとするならば、自分が今どの程度の確率でブルを狙うことができる腕前になっているのか、数字として証明することができるんだ」

 たまらないだろう? と言ってクーはニヤリと笑って見せた。

 前言を撤回するべきかもしれない。おそらくこれは僕のお勉強のためというよりは、純粋に彼女の趣味として行っていることだろうからである。


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 結局、僕はダーツの練習もそこそこに、確率と期待値の分野についての課題に取り組むことになったのだった。

 拒否をすることもできるだろう。このような問題を解いたり、自分のダーツのブルヒットパーセンテージを算出したところでその数字が上がるわけでもないし、何か良いことがあるわけでもない。知るかそんなの、と突き放してしまえばそれで終わりだ。

 しかし僕はそんな気にはならなかった。なんせ、僕のダーツ仲間はこのふたりだけであり、彼女たちは僕より明らかにダーツが上手く、自分のダーツの腕前とその根拠を数字の上でも証明することができるだろうからである。

 頭の中に収めることができなくなった思考を紙と鉛筆で形に残し、僕は計算を進めていく。

川 ゚ -゚)「ああ、そこはその考え方では行き詰まるぞ」

川д川「まずは考えを整理して、場合分けや定義とその統合の流れをデザインした方がいいと思うよ

('A`)「うるさいなぁ! アドバイスは乞われた時だけにしろよ!」

川 ゚ -゚)「ひゅー怖い」

川д川「キレる10代」

 こうしてちくちくと横から邪魔をされたり助言を得られたりしながら、なんとか僕は自分のダーツレベルを数字で表すことに成功した。


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 クーは塾講師を、貞子さんは家庭教師を、といった次第に彼女たちはアルバイトでそれぞれ日常的に人に勉強を教えているので、確かに教え方は上手かった。

 ただし、彼女たちとの話の中で当然知っているべき知識を僕が知らないと、ボロクソに貶される。それがクーだけならただ聞き流せば良いのだが、貞子さんにもその様が見聞きされるとあっては機会をなるべく少なくしたいので、必然的に僕にはなるべく色々なことを覚えたり考えておいたりするような習慣がついているというわけだ。

 恐怖心と必要性。僕はお勉強をするにあたってもっとも必要な要素はこのふたつなのではないかな、と勝手に結論づけている。道具として利用することのない知識を記憶に定着させるのはどうやらとても難しい。

川д川「いやしかし、中間テストなんて響きがもう懐かしいわ。と、そのように言いたい時期が私にもありました」

川 ゚ -゚)「本当に」

('A`)「? 大学生にも中間テストってあるの?」


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川 ゚ -゚)「ある~。あるんだよこれが! しかもほとんど丸暗記なの。やってらんね~」

川д川「私は薬学部がはたして理系の学部としてふさわしいのか、時々わからなくなるよ」

川 ゚ -゚)「植物の名前をひとつひとつ覚えるなんて種類の課題は小学校で卒業した筈なのに!」

川д川「ぐぐれ、画像検索しろ、と常々思うわ。花の顔見てピンとくるのは芥子の花だけで十分よ・・」

 学校のカリキュラムを憎む大学生たちの姿を横目に見ながら、僕はフォームを作ってダーツを投げた。本当に嫌なのであれば学校など辞めてしまえばいいのに、といった類の意見をわざわざ口にする必要はないだろう。

 計算で求めた数字とは関係なく、ダーツはその都度ブルに入ったり外れたり、入らない筈のトリプルエリアに突き刺さったりと奔放に振る舞った。理論上の自分の実力を数字で表すことができたとしても、実際その通りの結果がいつも返ってくるとは限らないのだ。


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○○○

 中間試験の結果がいつも通りだったのは僕だけに限ったことではなかったらしい。

 ツンは相変わらずトップクラスの出来栄えで、今回は総合得点で学年2位になっていた。もちろん学年1位はブーンだ。依然変わりなく。

('A`)「いやぁお見事。今回もトップで安心か? それともやった~! って感じなの?」

 体操服で体育館の床に座り込み、僕はブーンにそう訊いた。純粋な好奇心からである。

 
 ブーンは肩をすくめて見せた。

( ^ω^)「いやぁ、別に、どっちでもないお。1位だろうと違おうと、僕にとって何かが変わるわけではないお」

('A`)「ツンがトップクラスの成績を保つのは推薦のためだって言ってたな。ブーンはそういうのもないのか?」

( ^ω^)「ないお。別に大学行きたいわけでもないし」


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('A`)「え、ブーン、進学しないのか?」

 驚いて僕はそう訊いた。したらば学園はそれなりの進学校だ。その学年トップが高卒で働くとなったら学校側が黙っていないことだろう。

 即座に跡取りが必要となるほど『バーボンハウス関連の事情が切羽詰まっているようにも思えない。じっと見つめる僕の視線が居心地悪いのか、ブーンは苦笑いに近い笑みを浮かべた。

( ^ω^)「いや、進学しないってわけじゃあないお。就職したいわけでもないし、たぶん普通に大学には行くお。ただ、推薦なんかで話す志望動機はどの学部にも何もないから、一般試験で行かせてもらうお」

('A`)「なるほどね。ま、学年トップなんだもんな、推薦なくてもどうとでもなるか」

( ^ω^)「おっおっ、
純粋にチャンスが1回増えるわけだから、ンみたいに行きたい分野が決まってるなら良い制度だとは思うお」

 話題の女の子は僕らの視線の先で茶色いボールを床に弾ませ、体育の授業に取り組んでいた。


9
 
 バスケットボールだった。
 
 ツンがドリブルをついている。授業中のことなので、ノースリーブのユニフォームではなく体操服に短パンで、足元は体育館シューズだった。背筋がすらりと伸びていて、決して高い方ではないツンの背丈が大きく見える。
 
 なんというか、新鮮な光景だ。

('A`)「・・あれだけバスケ好きなんだから、そりゃ自分でもプレイするか。ウチ女子バスケ部ってないんだっけ?」
 
( ^ω^)「もちろんあるお。でも、ツンは部活には入ってない筈だお」
 
('A`)「ふぅん、なんでだろうね?」
 
 お勉強時間を確保するためだろうか?
 
 学年トップクラスの成績を維持する少女の動きを僕は目で追う。鋭いドリブル突破から、ツンはレイアップシュートを決めた。
 
('A`)「おお、鮮やか」
 
 
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 ツンの動きは明らかに一般的な女子高生とは一線を画していた。熟達した経験者の雰囲気を僕は感じる。スローラインに立つ貞子さんのようだなと僕は思った。
 
 そういえば貞子さんもバスケ経験者と言っていた。
 
 スローラインに立ってダーツを構えるツンを僕は頭に思い浮かべるやはり貞子さんのようにひと目でわかるバランスの良さをしているのだろうか?
 
('A`)(ダーツに関しては素人だろうから、それはないか・・
 
 そんなことを考えるのは、今まさにツンがフリースローを打とうとしているからだった。どうやら相手チームに現役バスケ部員がいるらしく、ツンと彼女の白熱した攻防の末にファウルを受けたものらしい。
 
 フリースローライン上でツンがボールを扱っている。自分ひとりの時間で行う儀式めいたルーティンだろう。僕はダーツとフリースローが似ていることを知っている。
 
('A`)(なるほどな――)
 
 見ているだけでも同じような性質をもっていることが僕にはわかった。誰にも邪魔されることなく、自分のペースで行うスローだ。その分正確さを要求される。基本的に、同じフォームで同じように行動し、同じような結果を作り上げなければならない。
 
 ツンの放ったフリースローはゴールリングをくぐり、ざっくりとネットに包まれた。
 
 
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 貞子さんはフリースローのみならず、シュート自体にもダーツとの類似性がみられると言っていた。
 
 経験日数はそこまで長くないけれど、僕はそれなりにダーツができる。おそらくこのクラスの中では少なくともトップクラスの腕前だろう。あるいは学年トップであるかもしれない。
 
 だから授業で定められたチーム分けに従ってバスケのミニゲーム参加した僕は、ひょっとしたら上手にシュートができるのではないかと思い、思い切って遠目からボールをゴールへ放ってみることにしたのだった。僕にしてはとても珍しい積極的な参加の態度だ。
 
 それはパスが通されてきたからだった。茶色のボールを受け取った僕は落ち着いて構え、ゴールを見据え、シュートを放つ。すると貞子さんが嘘をついていたことがわかった。まったくダーツとは似ていない。
 
 僕が放とうとしたシュートは、放物線を描く前にディフェンダーによって叩き落されていたのだった。これはダーツではありえない出来事だ。
 
 ブロックというやつだ。そんなことなど想定していなかった僕の初動は遅れる。失敗した僕のシュートもどきが相手の速攻に利用される。追うこともできずに振り向いて眺めると、視線の先では、クラスの陽キャのひとりが簡単なレイアップシュートで得点を重ねていた。
 
 
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(;'A`)(うひゃ~ 慣れないことなんてやるもんじゃあないな)
 
 僕は大いに恥じ入った。
 
 少なくともシュートを試みる必要はなかった。変な汗が全身から噴き出している。耳が熱く、おそらく真っ赤になっていることだろう。人体の構造上、赤くなった耳が自分の視界に入らないことを僕は神に感謝した。
 
 もう慣れないシューティングはコリゴリだ。
 
 とはいえミニゲーム中に運動量がいきなり衰えるというのもなんだか悪目立ちしそうなので、僕は試合の流れに沿ってコート上を走り回った。攻撃になったら味方のゴールに向かって走り、パスが回ってきたらドリブルはせずに他へと回し、守備になったら適当なところへマークに向かう。
 
 僕のマークを受け、肩をねじこむようにしてドリブル突破を図ってきた陽キャの人を簡単に通してしまうのは、そこまで大きな罪とは言われないことだろう。

 大きくひとつ息を吐く。だいぶ平常心を取り戻してきた。
 
('A`)(ふい~。このまま何事もなくミニゲームが終わればいいな)
 
 そんなことを考えながら守備につく。そして相手のパスミスを見て取った僕が何の気なしに走り出すと、何故だか僕の視界の中にはどこにも敵の姿がいないのだった。
 
 
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('A`)「あれ? 誰もいないな」
 
 不思議に思いながらも立ち止まる理由はないため、僕は前へと足を進める。手を振り足を出す。ランニングのサイクルをとりあえず続ける。
 
 ソッコー! と、誰かが上げた声が耳に届いた。
 
('A`)「そっこー? 速攻か? え、僕が?」
 
 後方からボールが投げ入れられたのが空気でわかる。はたして、僕の視界には速攻を防ぐディフェンダーの手ではなく、床に弾む茶色いバスケットボールが入り込んできたのだった。
 
 ボールが跳ねる。目標を見定めた僕の体が全力で足を踏み込み加速する。それまでのアリバイ的な走り込みから全力疾走に切り替えたのは、僕がこのボールに追いつくことができず攻撃失敗となるのはご勘弁願いたかったからである。
 
 そんな打算的な速攻の動きが奏功するとは思えなかった。僕は決して体力があるわけでもないし、足が速いわけでもない。しかし、どういうわけだか、僕はディフェンスに妨害されることなくボールに何とか追いつけていた。
 
 
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 ボールを掴む。バスケットボール特有の質感が手の平に伝わる。しかし、そんなものを感じ取っている余裕などはなく、僕は次のアクションを決断する必要があった。すなわち、ドリブルだ。
 
 この全力疾走の動きからの、ドリブルをついてレイアップ。シュートのイメージはできた。バスケットボール経験者ならば難なくこなせる動作だろう。
 
 ただし、ずぶずぶの素人である僕にそれが実行できるかどうかは、まったく別の次元の話である。
 
(;'A`)(できるわけねぇ~!)
 
 僕はゼロ秒でそう判断した。上手にドリブルをつける自信も、床から跳ね返ってきたボールをキャッチする自信も、スムースにレイアップシュートに持っていく自信も僕にはなかった
 
 シュートだ。誰にも妨害されないシュートであれば、僕にもそれなりのことができるかもしれない。
 
 はたしてこの一瞬の間に本当にそんなことを考えたのかは定かでないが、とにかく僕はその場に留まり垂直に飛び上がるべく、全身全霊でストップをした。床と体育館シューズが最大限の摩擦を強いられ悲鳴を上げる。なんとか止まった。
 
 
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 両手で保持したボールを体ごと一瞬沈めるようにしてシュート動作に入っていく。
 
('A`)「!」
 
 このタイミングで僕が急ブレーキをかけるなど思ってもみなかったのだろう、おそらく慌てて僕を追いかけていた相手チームの陽キャが止まりきれずに僕の視界を横切った。無理やりその位置その体勢から反転して向かってきたところで絶対に間に合わないことだろう。
 
 それがわかった僕は、彼の姿を見たことで、かえって落ち着いてボールを扱うことができたような気がする。体全体とボールをひとつの動作の中に置き、その場に飛ぶイメージのままに右手から放つ。
 
 会心のダーツスローをした時と同じような感触が指に伝わる。何とも言えない手ごたえだ。
 
 まるで自分の体の一部を伸ばして宙を進んでいくような感覚。ボールの回転する様を僕は感じる。そして、手を伸ばしてリングを通過させるようにして、僕のシュートはゴールした。
 
 前言撤回、貞子さんは嘘をついていなかった。
 
 その感覚は、思い通りのスローでダーツをブルに突き刺した快感に酷似していたわけである。
 
 
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○○○
 
 ミニゲームを終えた僕はブーンにシュートを褒められた。
 
( ^ω^)「ナイスシュートだったお! 見事だお~」
 
(*'A`)「いやぁ、えへへ。入っちゃた」
 
( ^ω^)「嬉しがり方きめぇお。でも本当に良いプレイだったお」
 
(*'A`)「そうかな。えへへ」
 
( ^ω^)「たぶん安易にレイアップに行ってたらディフェンスに追いつかれてたお。それを止まってシュートの判断力、僕も負けてられないお!
 
(;'A`)「お、おぅ・・!」
 
 むしろ自分の実力と相談した結果の安易な判断でのシュートを褒められ、僕は平常心を取り戻す。ブーンは鼻息荒く自分に気合を入れていた。
 
('A`)「ええと、ブーンは次の試合?」
 
( ^ω^)「そうだお。打倒ジョルジュだお!」
 
('A`)「おお、それはなんとも高い目標。頑張ってくれ」
 
( ^ω^)「頑張るお!」
 
 
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 実際ブーンは頑張っていた。
 
 表情が柔和で、それに負けず劣らず顔立ち自体が丸く柔らかいので雰囲気的に小太りなようにに感じられるが、ブーンは実際のところ引き締まった体をしている。肉体労働の色合いが濃い飲食業の下働きで鍛えられているのかもしれない。
 
 体育の授業中の動きも俊敏だ。それほど積極的に目立とうとするわけではないけれど、成績面で学年トップということもあってか、ジョルジュとはまた違った感じで一目置かれているという印象である。
 
 そのジョルジュは言わずもがなのエリート・アスリートだ。特にバスケは専門分野、おそらくこのクラスの誰を相手取っても好きなように振る舞えることだろう。
 
 今回ジョルジュが選択した役割は“大人のバスケットボールプレイヤー”だったのかもしれない。
 
 オラオラじみた振る舞いはせず、ボールをパスで皆に回し、素人の犯したミスの尻拭いをするような仕事に終始していた。
 
('A`)(確かにあれだけ卓越した実力があるなら、単純に無双するより、完全にゲームをコントロールする方が楽しいのかもしれないな)
 
 僕はそのような感想をもった。
 
 
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 神になったような気持ちになるのかもしれない。完全に自分の手の平の上で両チームを競い合わせ、接戦を作り出し、どちらに転ぶかわからないという白熱の中で、最終的には自分のチームをギリギリ勝たせる。
 
(;^ω^)「ぶは~、まったく歯が立たなかったお!」
 
 そう感じたのは僕だけではなかったらしく、たったの2点差で敗れた筈のチームの選手は両手を挙げた降参のポーズでそう言った。
 
( ^ω^)「やっぱりジョルジュは流石だお。完全にやらされただけって感じだったお」
 
('A`)「お疲れ。頑張りは伝わったよ」
 
(*^ω^)「そう、僕は頑張ったお!」
 
('A`)「よしよし」
 
 頑張りを認められたブーンは一定の満足を得られたようで、胸を張って大きく頷いて見せたのだった。可愛らしいやつである。
 
 そしてミニゲームの時間は終わり、授業最後の10分間程度は各々自由に過ごして良いような状態になった。僕はブーンを誘ってシューティング練習を試みた。
 
 
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('A`)「ちょっとあのシュートが気持ちよかったから付き合ってくれない? もうちょっと打ってみたい」
 
( ^ω^)「なんというストレートな欲求、断る理由はどこにもないお」
 
('A`)「悪いね」
 
 僕とブーンはシュートを打つ役とボール拾いをする役を代わりばんこに務め合い、しばらくシューティングの時間を過ごした。
 
 集計を取ったわけではないけれど、おそらく僕の方が成功率が高かった。それほどの情熱を持てないのか、途中からブーンはシュートを打つのをやめてゴール下に陣取り、シューティングをする僕のための球拾いの役割を買って出てくれるようになった。
 
( ^ω^)「おっおっ、マジでドクオは結構シュートが上手いお。何かコツがあるのかお?」
 
('A`)「コツ? やっぱり正しい打ち方ってあるんだろうから、ゴールする打ち方を見つけたら、毎回その通りに体を動かすことなんじゃあないの?」
 
( ^ω^)「なんか凄い真理みたいなことを言ってるけど、そんなのいきなりできる筈ないお」
 
('A`)「う~ん、そうかな、そうかもな。まあでも僕はそういう練習というか訓練というか、そういうのをやってるからさ、それで応用が利いてるのかもしれない」
 
( ^ω^)「何言ってんのかサッパリだお」
 
 
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 転校時の自己紹介では話題に出さなかったが、別に僕はダーツをしていることを隠すようなつもりはない。だからブーンに対してもそれを打ち明けることにした。
 
('A`)「僕さ、ダーツやってんだよ。ダーツって基本的に毎回固めたひとつのフォームをなぞることの繰り返しだから、自然とそういうのが身に付いてるんじゃないかと思う」
 
( ^ω^)「ほぉ~、ダーツって、あのダーツかお?」
 
('A`)「どのダーツが他にあるのか知らないけど、たぶんそうだ」
 
( ^ω^)「キルアが6歳か7歳で極めたやつだお!?」
 
('A`)「僕は足元にも及ばないけど、まあそうだ」
 
( ^ω^)「大人の趣味って感じだお~」
 
('A`)「うん、だからなんだか気取ってる感じがしてペラペラ喋る気にはならないんだ。隠してるわけじゃあないけど、そのへんよろしく」
 
( ^ω^)「なんとも面倒くさいやつだお~」
 
('A`)「うるさいなぁ。ブーンにも人にはあまり言わない趣味のひとつくらいあるだろ?」
 
( ^ω^)「僕・・? う~ん、まあ、確かに訊かれなきゃわざわざ言わないことも中にはあるお」
 
 実際、尋常じゃなく優れた学業成績をまったく自分からアピールすることのなかった僕の友人はそう言った。
 
 
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 自由時間が終わり、片付けをし、ブーンと並んでクラスへ戻る。あまり学校で話したくないと言ったつもりであるにも関わらず、道中の話題は容赦なくダーツだった。
 
 もっとも僕もダーツについて話すことが嫌いではないので、それは楽しい時間だったのだが。
 
('A`)「――それでまあ、思ったわけだよ。ダーツとシューティングは似ているなあ、と。だから僕がシュート上手なのだとしたら、それはダーツのおかげだね」
 
( ^ω^)「おっおっ、フリースローなんてその最たるものじゃないかお?」
 
('A`)「まさにそうだね。ダーツとフリースローは似てると思う。楽しいよ」
 
( ^ω^)「そんなに楽しいなら僕もやってみたいものだお」
 
('A`)「ふ~ん、やりたいなら今度連れて行ってやろうか?」
 
( ^ω^)「行けたら行くお」
 
('A`)「それ行かないやつじゃねえか」
 
( ^ω^)「フヒヒ、そうだな、今日はどうだお? バイトは入っていない筈だお」
 
('A`)「シフトを完全に把握されているのが恐ろしいけど、僕は構わないよ。おデートしようか」
 
 
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 着替えも済ませた僕らを待つのは昼休みだった。ブーンと並んでお弁当を広げながら、僕は学校の友人と初めてすることになるかもしれないダーツに思いを馳せる。
 
('A`)(練習用の真鍮ダーツがある筈だから、とりあえずブーンにはあれを使ってもらおう。一応クーに連絡入れて許可取っといた方がいいだろうな・・)
 
 ダーツが趣味だと言いながら、家以外の場所でダーツをやったこともなければ、自分でダーツショップに行ってグッズ購入もしたことがないのが僕だった。お金は払っているけれど、消耗品に関してはクーや貞子さんのおすそ分けをされているのが現状である。それらを他人に使用させるには前もって一言伝えておくべきだろう
 
 今は誰も座っていない、前の空席を僕は眺める。ツンの席だ。女子は男子と比べて着替えや準備に時間がかかる傾向にあるのが世の常なので、彼女もまたご多分に漏れず、体育の授業からまだ帰ってきていないのだった。
 
('A`)(おデートね・・しかも、これは、いわゆるお家デートだ)
 
 ツンも誘ってみたいものだと僕は思った。ブーンも来るのだから変な誘いにはならない筈だ、と僕は自分に対する理論武装を開始する。
 
 ブーンが興味を持った、僕の趣味であるダーツを僕の家でするのだ。ついでにお喋りしたり、他の遊びをしたり、望むなら一緒に勉強をしてもいい。そしてそれなりに時間が過ぎて、夕飯を食べても良いような流れになるのだとしたら、僕は自分で作ったオムライスをツンに食べさせることができるだろう。
 
 それはとても素晴らしいことであるように僕には思えた。
 
 
23
 
('A`)(どうする、いつ話しかける・・? 午後の授業のどこかの合間か、それともブーンとそんな感じの話をして、ふと思いついたような感じでメッセージでも送るか・・?)
 
 そんなことをぐるぐると考えていると、脳裏にクーの顔が不意に浮かんだ。
 
('A`)(うおおツンが来るかもしれないことをクーに報告するというのか!? それは絶対に嫌だ! 絶対に学校サボったりバイト抜け出したりしてチラ見しに来るに決まってる・・!)
 
 唸りたくなるようなテンションで僕は頭を働かせる。
 
 とりあえずブーンを来させる以上、連絡は必要だ。ひょっとしたら必須ではないかもしれないけれど、ここを怠るのには様々なリスクが伴うことが容易に想像できる。少なくとも、単純に忘れるのではなく見られたくないものがある、といったような後ろ暗い理由ではやめるべきだ。
 
('A`)(どうするか・・!?)
 
 結局僕はブーンのことを報告することにした。友達がダーツに興味あるみたいなんだけれども連れて帰ってやらせていいか、といったような内容の確認に留めるのだ。その友人がどのような人物なのか、性別がどうなのか、来る予定が立ったのはいつのことなのか、などをわざわざ書いておく必要はない。
 
 ブーンが来るから許可を取る。詳細を訊かれたらブーンことを言えばいい。許可を取った後でツンをも誘う機会が生じ、付いて来ることになるわけだが、これに追加の許可をわざわざ取る必要はないだろうと考えた。
 
('A`)(・・これだ!)
 
 
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 僕がそのように結論付けて、内藤ホライゾンという友達が家に来るかもしれないよ、といった内容のメッセージをクーに送った。そのメッセージに既読が付き、返信が返ってくるのにほとんど時間は必要なかった。
 
川 ゚ -゚)『ドクオもついに友達を家に連れてくるようになったか。実に微笑ましい』
 
('A`)『ダーツの道具借りるよ』
 
川 ゚ -゚)『どうぞお好きに。あるものは勝手に飲み食いして良いから、おもてなししてあげなさい』
 
('A`)『さんくす』
 
川 ゚ -゚)『お姉ちゃんも顔を見せようか? ご挨拶しとかないとな』
 
('A`)『来るなよ、親か』
 
川 ゚ -゚)『行けたら行くから』
 
('A`)『それ来ないやつだろ。正しい振舞いだよ』
 
川 ゚ -゚)『ふふん』
 
 もう一度重ねて来ないよう依頼するのはかえって不信感を与える結果になるだろう。そのように考えた僕はやり取りの締めくくりに無難なスタンプを注意深く選んで送信し、大きくひとつ息を吐く。
 
 そうしてひと息ついたのとほとんど同時に、ツンが教室に入ってきた。
 
 
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(;'A`)(わ~お すごいタイミング!)
 
 ――どうする、すぐに声をかけるか!?
 
 そう考えたのがいけなかった。思考は躊躇を誘引する。反射的に話しかけられなかった僕はツンへのアプローチのタイミングを失っていた。
 
 残る望みはツンから何らかの働きかけをしてもらうことだけれど、彼女には僕に話しかけることよりよっぽど重要な用事があったのだった。
 
ξ゚⊿゚)ξ「おまたせジョルジュ、勝手に取ってくれてもよかったのに」
  _ 
( ゚∀゚)「さんきゅー、ハハハ! 一応女子の鞄だからな!」
 
 どうやら今日はジョルジュへお弁当を提供する日だったようなのである。
 
 ツンはジョルジュへ弁当を手渡すと、自分の分のお弁当を持って昼食を共にするメンバーのところへと向かおうとした。その日常的に行われる流れの途中に僕が口を挟めるようなタイミングはどこにもなかった。
 
 立ち去り際、ツンが一瞬だけこちらに顔を向けた。
 
ξ゚ー゚)ξ「あ、そうそうドクオ、最後のはなかなか良いシュートだったわね」
 
 ニヤリと笑ってそう言ったツンを呼び止めることなど僕にはできず、再度声をかけようかと思った時には彼女は完全に僕に背中を見せていた。
 
 
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 大きくひとつ息を吐く。
 
('A`)(――まあいいや)
 
 少なくとも僕は何かを失ったわけではない。そのように考え自分を納得させていると、驚くべきことに、後ろの席から声をかけられた。
 
 僕の後ろの席に座っているのは当然ジョルジュだ。いつもは集中してご飯を食べた後即座に席を離れるため、僕はあまり彼の存在を意識することがない。
  _ 
( ゚∀゚)「なぁ、あのシュートは確かになかなか良かったゼ」
 
 思いがけない声かけ、それも褒めるような内容の発言に、僕は正直戸惑った。
 
 何と返答して良いものか、口ごもってしまう。ようやくお褒めの言葉に対するお礼が口から小さくでてきた。
 
('A`)「・・どうも。バスケ部のエースに褒めてもらえて嬉しいよ」
  _ 
( ゚∀゚)「そうだろそうだろ! そういやお前、こないだ試合観に来てたよな?」
 
('A`)「国体の話かな。行ったよ、準優勝おめでとう」
 
 結局僕はあの後連日何試合か観戦し、決勝戦でジョルジュ率いるVIP選抜チームが惜しくも敗れる様までをこの目に収めていたのだった。
 
 
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  _ 
( ゚∀゚)「準優勝で褒められるってのもあれだけどな! おれは優勝したかった!」
 
('A`)「いやでも日本で2位だったってことだろ? 十分凄いと思うけどな」
 
 実際ジョルジュは凄かった。決勝戦も敗れたとはいえ、ひとつのシュートの結果が違っていれば勝っていたような試合だったし、ジョルジュはすべての試合で活躍していた。少なくとも僕にはそう見えた。
 
 ブーンも隣の席で頷いていた。
 
( ^ω^)「僕も行ったお。ジョルジュのプレイは凄かったお~」
  _ 
( ゚∀゚)「ブーンもいたよな、珍しい面子に見られていたからフリースローが外れたのかもしれねぇ!」
 
(;^ω^)「もしそうだったとしたらすまんかったお・・」
  _ 
( ゚∀゚)「ハハ! もちろん冗談だよ! 来てくれてありがとな!」
 
 必要最低限以上の会話をジョルジュとするのはおそらく初めてのことだったが、彼の陽キャさがそうさせるのか、思いがけず朗らかな雰囲気となった。
 
 なんだ、いい奴じゃないか、と僕は現金にも思ってしまった。わずかにあった緊張感も次第に溶けてなくなっていき、僕はさほど気をつけずに発言するようになっていく。
 
 それがいけなかった。
 
 
28
 
 会話の流れの中で訊かれたのだ。
  _ 
( ゚∀゚)「いやぁでも、わざわざ国体に来てくれるとは思ってなかったよ。バスケ部でインターハイとかウィンターカップとかならわかるけどさ、おれ以外皆知らない奴らだろ? バスケが好きにでもなったのか?」
 
('A`)「バスケが好きか、か。どうだろうな、見た試合は面白かったけどな」
  _ 
( ゚∀゚)「はぁん? どういう意味だ?」
 
('A`)「競技自体が好きかというと、正直まだよくわからないな、と思ってさ」
 
 何故って僕はバスケの詳しいルールさえもまだよくわかっていないのだ。『スラムダンク』を読んだ経験とツンから教えてもらった知識くらいが僕のバスケに関するもののほとんどすべてだ。
 
 やや強引にシュートが防がれ審判の笛が吹かれたとしても、オフェンスとディフェンスどちらのファウルになるのか僕には判断基準がよくわからないし、いまだにスクリーンプレイは理不尽に思える。こんな状態で好きも嫌いもないだろう、というのが僕の正直なところである。
 
 しかしこの返答は、バスケ部のエースであり、ひょっとしたら国を代表するレベルのバスケットボールプレイヤーなのかもしれないこの男の気に入るものではなかったらしい。
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( ゚∀゚)「なんだよバスケ好きで観に来たんじゃないのかよ。あれか、ツン目当てか?」
 
 
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 その質問は僕の気に入るものではなかった。何故ならほとんど図星だったからだ。
 
 バスケ観戦に足を運ぶ動機としてツンの存在を否定することは僕にはできない。
 
 そのような下心を、おそらくツンの恋人なのだろう男から直に指摘され、僕は糾弾されているような気分になった。
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( ゚∀゚)「・・まったく、あれにも困ったもんだな。おれは観に来てくれるのは嬉しいが、あいつ目当てで付き合ってるだけならオススメしないぜ」
 
('A`)「――」
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( ゚∀゚)「ツンはバスケ布教に狂信的なだけだからなァ、やめとけやめとけ、あいつもそういうのはもうやめた方がいいけどな」
 
( A )「――なんだよ」
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( ゚∀゚)「んん、何だァ?」
 
( A )「――なんだよ、その言い方は」
 
 下心を持ってバスケに接しているような僕を咎めるのはもっともなことだろう。恥じ入りはすれど、そこに反論する余地はない。ただし、その責がツンにも及ぶというなら話は別だ。
 
 僕はツンに誘われたのが嬉しかったし、何よりその誘いに乗って観たバスケの試合も面白かったのだ。
 
 
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( ゚∀゚)「言い方? おれは正直に話してるだけだぜ。おれはバスケが好きで得意だが、元々興味をもっていない男に声をかけて観戦させる女の気持ちも、興味がないくせにその女が可愛いからってのこのこ付いていく男の気持ちもわからねぇよ」
 
(;^ω^)「まあまあ、そのくらいにしておくお? 大人げないお」
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( ゚∀゚)「はぁん? おれの方が悪いのか? 確かにムカついてはいるけどよ、女目当てでバスケ観に来て、こうしておれと話しているのに、バスケが好きなわけじゃあないとか言うんだぜ、おれにムカつくなって方が無理だろうよ」
 
(;^ω^)「ドクオも別にそういう意味で言ったわけじゃあないと思うお・・」
 
 ちらりとブーンが僕を見る。弁明しろと言いたいのだろう。
 
 確かに僕はジョルジュが受け取っているような意味でバスケについて話したわけではない。どちらかというと好きで、おそらく好きになるのだろうが、まだその評価をする資格が僕にはないと思っているだけである。
 
 僕の言った文言もあるいは誤解を生みかねないものだったのかもしれないが、僕にそのことについて申し開きや謝罪をするつもりはさらさらなかった。
 
 僕もムカついていたからである。
 
 
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 僕は腹が立っていた。表に出していなかっただけで、ずっとこの男に対して度し難い感情を抱いていたのだ。
 
 今この場で僕に対して“正直なところ”をぶちまけてくれたのもそうだが、何よりツンという存在がいながらにして高岡さんとラブホテル通いをしていることがそもそも理解不能なのである。さらにはツンと高岡さんは友人関係にあるというではないか。
 
 あまつさえ、そもそも高岡さんとの繋がりは、ツンに紹介されてできたものだったらしい。
 
 僕も男だ。そうした欲望が存在するのはよくわかるし、まったく羨ましく思うところがないといったら嘘になる。環境と状況が用意されれば僕も同じような行動を取ることもあるかもしれない。
 
 しかし、とにかくムカつくのだ。
 
 これが僕の正直なところだ。
 
 僕も僕なりの正直なところをジョルジュにぶちまけても良かったのだが、そのようなことをしたところで誰の得にもならないだろう。それで僕の気が晴れるとも思えない。
 
('A`)「いいんだ、ブーン。僕に弁解をするつもりはない。おそらく僕とジョルジュはどの道、解り合うことなんかできないんだ」
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( ゚∀゚)「ほ~う、珍しく意見が合ったな」
 
 
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 勝負だよ、と僕は口に出していた。
 
('A`)「ジョルジュ、僕と勝負しよう。こうなったら男と男は決闘をしなければならない」
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( ゚∀゚)「喧嘩でおれに勝てると思うのか?」
 
('A`)「もちろん喧嘩では勝てないだろう。ジョルジュのバスケットボール人生としても喧嘩なんてやってられないだろうしね」
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( ゚∀゚)「なんだよ意外と冷静じゃあないか。それならそうだな、相撲でも取るか?」
 
('A`)「なんでだよ!?」
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( ゚∀゚)「男と男の勝負は相撲と相場が決まってるだろ・・?」
 
(;^ω^)「そんなの聞いたことねーお。・・それに、喧嘩と同じくドクオに勝ち目があるとは思えないお」
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( ゚∀゚)「それもそうだな。おい言い出しっぺ、もちろん何か考えがあるんだろうなァ?」
 
 ジョルジュ長岡の挑戦的な視線を受け、僕は大きくひとつ息を吐いた。小さく頷く。決闘の手段として考えていたわけではないが、ずっと気にはなっていたのだ。
 
('A`)「フリースローだよ・・。お前のへたくそなフリースローより、僕の方がひょっとしたら上手なんじゃあないか?」
 
 今度は意識した挑発的な内容の発言だ。もちろんバスケ部のエースにはこれを聞き捨てることなどできなかった。
 
 
   つづく